あの夜の、原辰徳監督の思い、そして怒り
2011年6月15日水曜日夜、東京ドームのゲーム後、インタビュースペースに現れた原監督(当時)は、机に帽子を叩きつけ、「総括なんてできないねえ!」と語気を荒げました。
いまだ語り草になっている、原監督の怒髪天シーン。
対戦相手は、千葉ロッテマリーンズ(交流戦)。ジャイアンツ1点リードの最終回に、抑え(アルバラデホ投手)がツーラン・ホームランを浴び、まさかの逆転負け。チームは、攻撃の要(かなめ)=坂本・阿部・小笠原選手の3人が極度の不振に陥る「どん底」状態で、借金は6に膨らみました。結局、その年、ジャイアンツはペナントレースを3位で終え、クライマックス・シリーズもファーストステージで敗退。
それから5年。
今夜のゲーム後、高橋監督は、記者の「各打者の工夫」を訊ねる質問にこう答えています。
「工夫も何も、いつも言っている通り、打席に立ったらピッチャーとの勝負です。そこで好結果を残す以外にないと思います」
高橋監督は、昨日も「(ゲームの結果は)選手次第」と聞き取れるような発言をしています。
感情をけして露(あらわ)にせず、クールな姿勢を貫く…それが、由伸イズムであり、批判するつもりも責め立てる気持ちもありません。
しかし、もし、高橋監督の心のどこかに「自分がバッターボックスに立てないもどかしさ」を感じているとしたら、それは今シーズンのジャイアンツにとって、とてつもない不幸です。
ピッチャーと勝負するのはバッターボックスに立つ打者だけではなく、チーム全体であり、確固たるベンチワークであり、その総帥が「背番号24」なのだから。
シャットアウト負け目前の9回2死…代打・高橋由伸!
「ヨシノブだったら何とかしてくれる」
もう、その願いは二度と叶いません。
3安打・完封負け。
光明のない6連敗。
シーズン初の借金。
自責点0のエースに黒星。
総括なんてできないねえ!…まさにこれが、球場で、テレビで、今夜のゲームを観たジャイアンツファンの感想ではないでしょうか。